幻視時代

2011年9月15日読書

文芸評論家の矢渡利悠人、彼の高校の後輩にして小説家のオークラ、編集者の長廻の三人は、立ち寄った写真展で、ある一枚の写真の前に釘付けとなった。18年前の大地震直後のその画面には、瀕死の恩師・白州先生と大学生の悠人、そして一人の少女が写っていた。少女の名は風祭飛鳥。悠人の同級生であり、淡い初恋の相手…。しかし、大地震の4年前に起きた「女子高生作家怪死事件」の被害者で、この時すでに死亡していたはず―!?心霊写真なのか?いや、飛鳥が生きているのか!?22年の時を超え、悠人ら三人が超絶推理の末、辿り着いた迷宮入り事件の全貌と、驚愕の真相とは!?書き下ろし長篇ミステリ。

いつものエロ・グロも百合もフェミニズム主張も有機栽培信仰も無く、後半は初期西澤作品のテイスト復活で登場人物3人が推理ディスカッションを繰り広げるという真に好みな作品。推理の前提条件をたびたび覆したり、着地点が読めなくて最後まで楽しめた。

ただ好みで言えば、エピローグで真相が確定してしまったのがちょい蛇足かも。あれ無しで「実はまた違った解釈もありえたかな～」ぐらいの不確定さを持って終わっていた方が好きだな。