アンデッドガール・マーダーファルス(1)
2019年10月30日 読書吸血鬼に人造人間、怪盗・人狼・切り裂き魔、そして名探偵。異形が蠢く十九世紀末のヨーロッパで、人間親和派の吸血鬼が、銀の杭に貫かれ惨殺された…!?解決のために呼ばれたのは、人が忌避する“怪物事件”専門の探偵・輪堂鴉夜と、奇妙な鳥篭を持つ男・真打津軽。彼らは残された手がかりや怪物故の特性から、推理を導き出す。謎に満ちた悪夢のような笑劇…ここに開幕!
怪物ならではのトリックとか謎解きがあったりして西澤保彦風味を加えつつ、キャラ的にも興味を引く題材で今後が楽しみ。古今の名探偵もさらっと登場してきたりするし(灰色の脳細胞はともかくルルタビーユはネット見るまで気付かんわ)
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鍛治の里に暮らす少年キリヒトは、師の命により、大陸最古の図書館を統べるマツリカに仕えることになる。古今の書物を繙き、数多の言語を操って策を巡らせるがゆえ、「魔女」と恐れられる彼女は、自分の声をもたないうら若き少女だった。本を愛し、言葉の力を信じるすべての人に!
正直なところ、上巻の前半あたりでは「つまんねーな、退屈だなー」と思っていたりもしたのだけれども。下巻に入って3国の武力衝突を回避するための策を詰めたり、謎の刺客に左腕を封じられたり、交渉でなんやかんや活躍があったり、刺客を追って厳冬の敵根城へ乗り込んだりと飽きさせない展開で大変楽しめた。しかもそれを精緻な文章と豊富な表現で綴ってくれるのだから目が幸福。
刺客を倒した後もまだ結構頁が余っていて冗長な展開が待っているのか?と危ぶんだが、そこからは心に染みる展開が待っている。この部分にこれだけ尺を割いてくれて本当にありがたい。
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旧家の猪丸(いまり)家に現れた記憶のない謎の女・葦子(よしこ)は、開かずの間だった蔵座敷(くらざしき)で“狐狗狸(こっくり)さん”を始める。だが、そこは当主・岩男(いわお)の前妻たちが死んだ場所だった。刀城言耶(とうじょうげんや)が訪れた日も“狐狗狸さん”が行なわれるが、密室と化した蔵座敷の中で血の惨劇が起こる。表題作他、全4編を収録した“刀城言耶”シリーズ第1短編集。
表題作がやはり良し。
密室モノのお約束で密室講義が挿入されて「親の顔より見たよその展開」って気にはなったけど。
そして結局赤箱の謎は謎のまま。もやもやする...
鍛治の里に暮らす少年キリヒトは、師の命により、大陸最古の図書館を統べるマツリカに仕えることになる。古今の書物を繙き、数多の言語を操って策を巡らせるがゆえ、「魔女」と恐れられる彼女は、自分の声をもたないうら若き少女だった。本を愛し、言葉の力を信じるすべての人に!
メフィスト賞受賞作ってことで前々から読んでみたかったのだが、京極夏彦並の弁当箱装丁なのに上下巻、という途轍もない物量に恐れをなして後回しにすること幾歳月。とうとうトライしてみた。
メフィーだけどミステリじゃない。いや広義のミステリかも知れんが、所謂ファンタジー。それもなろう系じゃなく、久々のハイファンタジーだ。言葉を中心に、世界観の作りこみが緻密だなと感じた。
物語は中盤からブラタモリになり、「9マイルは遠すぎる」的展開があったあとキリヒト(主人公)の無双展開に。いや無双っても全然なろうっぽくはないけども。fE風花鳥月を3ヶ月近くもやってるせいでキリヒト=ツィリル、マツリカ=リシテアで脳内イメージが固まってしまった。
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新約 とある魔術の禁書目録(22)リバース
2019年9月30日 読書世界破滅を狙った大悪魔コロンゾンの脅威は去った。『学園都市統括理事長アレイスターの犠牲』という多大なる損失と引き換えに、上条当麻はついに、ついに科学と魔術の世界を救ったのだ。ここはイギリス清教の聖地・ウィンザー城。祝勝会にて熱烈な歓迎を受ける上条が目を向けると、そこにはインデックス、御坂美琴、食蜂祈操らの姿も確認できる。本当に、『平和』が訪れたのだ。―しかし。なにかを忘れてはいないだろうか。…そう、コロンゾン戦直後。上条の右手は破裂してしまっているはずで!?そして。ウィンザー城へ怪物が襲来する。翼を持つトカゲが示すものとは。これは、魔術と科学が交差する、その集結の物語。『新約』編の結末を見届けよ!
仕方ないとはいえ作中で「スカイブルーとレモンイエロー」を連呼されて、さすがにしつこいと感じた。もちっと他に表現のしようがなかったものか。
統括理事長がアイツになったのはわかるとして、総大主教がアレなのは斜め上というか、他に適任いなかったのかかよ!という気にはなった。魔術サイドのキャラ無駄にあんだけたくさんいるんだから...
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おじいちゃんが推理作家で、おばあちゃんが法医学者、
父さんが検事で母さんが弁護士、お兄ちゃんが刑事で
お姉ちゃんがニュースキャスター、弟が探偵役者で妹はVR探偵。
名探偵一家のサポートに徹するぼくだけれど、
ある日強烈な「首吊り死体」を発見し、連続殺人事件を追うことに。
被疑者は怪人・ヴェールドマン。
布(ヴェール)に異様な執着を示す犯罪スタイルからそう呼ばれている――。
西尾維新先生の記念すべき100冊目。そうか、クビツリサイクルからもうそんなに経ったのか...
主人公の家族が早々たる肩書き揃いなんだけど推理方面はともかくキャラとしてもそんな役立ってるフシもなく、名前負け感が強い。
まぁ、工藤優作レベルまでいくと出てくるだけで謎が解かれて話が終わっちゃうので、ほどほどの按配にしなきゃなんだけれども。
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奇妙な文様が刻まれている魔偶―土偶の骨董―は、所有する者に「福」と「禍」を齎すという…。大学を卒業して3年目の春を迎えた刀城言耶は、その話を聞いて旧家の屋敷を訪れた。そこには魔偶に興味を持った者たちがすでに集っていた。表題作の他、『妖服の如き切るもの』『巫死の如き甦るもの』『獣家の如き吸うもの』を収録した中短篇集。
表題作は「またそのネタ使うのかよ!」と思わずにはいられなかったが人物が違うからセーフなのか。
2番目の人体消失モノが「ぞっとする」点においてはピカイチだった。
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断崖に閉ざされた海辺の村に古くから伝わる、海の怪と山の怪の話。その伝説をたどるように起こる連続殺人事件。どこかつじつまが合わないもどかしさのなかで、刀城言耶がたどり着いた「解釈」とは……。シリーズ書き下ろし最新作!
最初の竹林餓死事件が一番魅力的な謎だったが、真相がギャグというかバカミス一歩手前でのけぞった。
ラストはホラーしていて中々に怖い。
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都知事探偵・漆原翔太郎 セシューズ・ハイ
2019年9月15日 読書弁舌巧みな爽やかイケメン、でも天然な世襲政治家・翔太郎が、都知事選に立候補すると言い出した! 真面目で融通が利かない秘書・雲井は、翔太郎のために奔走し、妨害工作を退け、彼は都知事に当選する。だが、二人の前に次々と現れる難事件――テロ組織・アイスクリーム党による都議会襲撃、ゆるキャラ「ケンダマダー」殺害、そして都の賓客である美人王女のダイヤ盗難……。支持率が急落する都知事と秘書が真実を明らかにするとき、東京の、そして日本の政治が変わる!?
前作は読んでいて続編があるのも知っていたが放置していた一冊。
某議員が閣僚入りしたのでふと思い出して読んでみたり。
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戦前、戦中、戦後にわたる三軒の遊郭で起きた、三人の花魁が絡む不可解な連続身投げ事件。誰もいないはずの三階から聞こえる足音、窓から逆さまに部屋をのぞき込む何か…。大人気の刀城言耶シリーズ最新書き下ろし長編。
遊郭の歴史とか風俗が詳らかに記されててそこだけでも面白い。
冒頭、遊郭の見取り図がバーンとあって「おお、館モノかぁ!」と期待に胸を膨らませたが別に見取り図が必要になるようなトリックはなかった。ていうか、このシリーズには毎回ある「登場人物一覧」が無いのを気付かれにくくするための苦肉の策だったような。こっちはトリック(というかフェアプレイ)に関わるし。
メインのトリックは「さすがにそれは周りのだれかが気付くだろ」って奴なので自分の予想からは外していたものがまさにそれだった。えぇ...
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水神を祀る四つの村。奇怪な雨乞いの儀式。湖上の密室殺人。神男たちは次々と……奈良の山奥、波美地方の"水魑様"を祀る四つの村で、数年ぶりに風変わりな雨乞いの儀式が行われる。儀式の日、この地を訪れていた刀城言耶の眼前で起こる不可能犯罪。今、神男連続殺人の幕が切って落とされた。ホラーとミステリの見事な融合。シリーズ集大成と言える第10回本格ミステリ大賞に輝く第五長編。
分厚いのに半分過ぎるまで殺人事件が起こらないのでダレるが、そのぶんお話世界の構築には役立っていた。
終盤の犯人推理が二転三転するのはいつものことだけど、「ああやっぱりこいつか」からの「と思わせて実はコイツだよ!」が今回は見事で意表を突かれた。
ラストのアレは「んん?近***にならねぃ?」ってのと「どっちだよ...」の2つのサプライズがあって脳が追いつかなくなったり。
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りゅうおうのおしごと!(10)
2019年9月1日 読書竜王、遂に小学校の教壇に立つ!「澪たち、くじゅるー先生に鍛えてもらいたいんです!」小学生の将棋大会『なにわ王将戦』で優勝を目指すJS研。しかしあいの新しい担任にJSとの同居を問題視された八一は、自らの潔白を証明するため小学校で将棋の授業を受け持つことに。一方、女流名跡リーグ進出を目指すあいの前には謎の女流棋士が立ちはだかり、そして銀子は地獄の三段リーグで孤独な戦いを始めようとしていた―。それぞれの戦場で繰り広げられる魂の激突。決意と別離の第10巻!小さな背中に翼が生えたとき、天使は自らの力で羽摶き始める!!
八一があいを育てる手法がそら恐ろしいというか、天才は天才にしか育てられないというか。
そして今回の作中に登場する戦形が「入玉」ばかりというのも、「翼」を象徴するようで興味深い。
そして裏で進行していた姉弟子の3段リーグも、ラストで急展開を見せてすげぇ引きになっている。どうなる11巻。
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奇っ怪な分身、“生霊”の目撃談が語り継がれる奥多摩の旧家、谷生家。それが現れるとき、当人に死の影が指すと恐れられる謎の現象である。同家を訪れた刀城言耶は、そこで不可解な復員兵の死に遭遇するのだが…。表題作他、全五編を収録した“学生時代の事件簿”と言うべき“刀城言耶”シリーズ第二短編集。
推理で解決はしても、ホラー的な謎は残る...というお約束で読後感がぞわぞわするシリーズの短編集。短編なので怪異譚の薀蓄はほどほどに抑えられており、ある意味残念。
トリック的にはラストの「顔無の如き攫うもの」がエグくて良かった。
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こうして誰もいなくなった
2019年8月25日 読書あの名作『そして誰もいなくなった』を再解釈し、大胆かつ驚きに満ちたミステリに仕上げた表題作をはじめ、ラジオドラマ脚本として描かれ、小説としては世に出ていない掌編や、自殺志願者の恐怖と悔恨を描く傑作ホラー「劇的な幕切れ」、書店店長の名推理が痛快な日常ミステリ「本と謎の日々」など、一作たりとも読み逃せない名作揃い。有栖川有栖作家デビュー30周年記念を飾る、華麗なる傑作作品集!!
表題作の中篇以外に13もの短編が収められてるのだが、求めているテイストのものが表題作しかなかったのでそこは残念だった。内容紹介読んどけよって話だが。
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グラスバードは還らない
2019年8月22日 読書ガラス製造社の研究員セシリアは、新規の事業取引先として、不動産王ヒューに関わることになる。ヒューは高層ビル最上階の邸宅にて、秘蔵の鳥「硝子鳥」など希少動物を多く飼っていると噂されていた。ある晩、セシリアは同僚たち三人と拉致され、目覚めると外が見えない特殊なガラス張りの迷宮に閉じ込められたことに気づく。「お前たちの罪を知っている」というヒューの言葉に怯える中、突然ガラスが透明になり、研究員の一人が殺されたことが判明する。傍には、どこからか紛れ込んだ「硝子鳥」が鳴き声を響かせていた……。隠れる場所がないガラス張りの迷宮で、犯人はどこへ消えたのか? 鮎川哲也賞受賞作家が贈る、『ジェリーフィッシュ』『ブルーローズ』に続く、本格ミステリシリーズ第3弾!
「らない」シリーズって呼ばれてるらしいのねこのシリーズ。
*登場人物たちが閉じ込められた建物の見取り図が出てきたときは「ウヒョー!迷路館っぽいトリックがありそうだな!」ってテンション上がって、案の定あれっぽいトリックが...ってところでまだまだ序盤。さらに怒涛の不可能状況が発生して「おいこれ硝子鳥が犯人しか可能性ないじゃん...でも鳥がどうやって人殺すんや...?」と推理していたら。なんかドラえもんのひみつ道具のようなアイテムがトリックのキモとして登場してきた。まぁ伏線はたっぷり敷いてあったけど。
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ブルーローズは眠らない
2019年8月18日 読書両親の虐待に耐えかね逃亡した少年エリックは、遺伝子研究を行うテニエル博士の一家に保護される。彼は助手として暮らし始めるが、屋敷内に潜む「実験体七十二号」の不気味な影に怯えていた。一方、“ジェリーフィッシュ”事件後、閑職に回されたマリアと漣は、不可能と言われた青いバラを同時期に作出した、テニエル博士とクリーヴランド牧師を捜査してほしいという依頼を受ける。ところが両者との面談の後、旋錠された温室内で切断された首が発見される。扉には血文字が書かれ、バラの蔓が壁と窓を覆った堅固な密室状態の温室には、縛られた生存者が残されていた。各種年末ミステリベストにランクインした、『ジェリーフィッシュは凍らない』に続くシリーズ第二弾!
海外が舞台で、主人公が赤毛女性と日本人の刑事コンビなので一見翻訳ミステリなのだが、中身はコッテコテの新本格ミステリな第2弾。現在の刑事パートと、過去の「被害者の手記(?)」パートが交互に進行するというかつての新本格ミステリ黄金パターンで攻めてこられて「ああ久々だなー」という感覚に陥る。だいたいここに○○が仕掛けられてんだよなーと注意深く読んでったものの、やっぱりひっかかってしまうという。
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忌み山で続発する無気味な謎の現象、正体不明の山魔、奇っ怪な一軒家からの人間消失。刀城言耶に送られてきた原稿には、山村の風習初戸の“成人参り”で、恐るべき禁忌の地に迷い込んだ人物の怪異と恐怖の体験が綴られていた。「本格ミステリ・ベスト10」二〇〇九年版第一位に輝く「刀城言耶」シリーズ第四長編。
序盤の怪異譚が解決編で「幽霊の正体見たり」なところは大島田のかつての作品群を思い出してムフフってなったし、連続殺人の犯人のアレは綾辻のアレを思い起こさせてくれた。いい構造だ。
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さよならよ、こんにちは
2019年8月5日 読書奈良盆地の半ば、大和郡山市に位置する越天学園の寮に居座る本陣達也。彼は、一度見たものを決して忘れることができない体質を持っている。若き達也のなかで渦巻くのは、母を喪った記憶と、その復讐、そして己の無力への怒りだった。そんな達也に、先輩・瓶賀流は一本のファミコンソフトを遺した。「ドラゴンクエスト」―その一本のゲームソフトが、達也にとっての「ふっかつのじゅもん」となる…。作家・円居挽、もうひとつのデビュー作と称すべき瑞々しさを放ち、森見登美彦も共感を寄せる傑作青春小説。
ルヴォワールシリーズの前日譚で、シリーズ読者的には表紙の段階でもうエモい。達也より背の高い流とかそりゃぁ、もう。
あとガジェットとしてのドラクエの扱いがすごく良くて、あああの設定考察拾ったのかー、て感嘆する。丁度今ユア・ストーリーが否々片論だけに、こういううまい使い方されると嬉しさもひときわ。
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田舎の町役場に就職した、都会育ちの新藤結子。やる気も地元愛もゼロの新人が任されたのは広報紙づくり。取材するのは、名産品、豊かな自然、魅力的な住民、そして「謎」―。広報紙は町を変えられるか?「来年で仕事を辞める」と心に決めながら、取材と締め切りに追われる結子。ある日、町立病院の院長から「難病で死んだ息子を記事にしてほしい」と頼まれるが、死因に不審な点があることに気付く―。仕事熱が高すぎる上司・伊達、暴言連発の町長・鬼庭、東京から左遷されてきた新聞記者・片倉たちに囲まれながら、事件解決に奔走する彼女の公務員生活1年目。クセモノ公務員が勢揃いのお役所ミステリー!
一人称視点のミステリで、デキる系の上司が出るのでてっきりその人が探偵役かと思いきや主人公が謎解きしちゃうので「お前が解くんかーい!」ってなるが、ラストで...なお話。
ミステリとしては派手な謎もないが、主人公の成長物語としては面白い...ていうか境遇に身につまされる部分が多くてストーリーに集中できなかったり。
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瀬戸内海の兜離の浦沖に浮かぶ鳥坏島。鵺敷神社の祭壇“大鳥様の間”で巫女、朱音は神事“鳥人の儀”を執り行う。怪異譚蒐集の為、この地を訪ねた刀城言耶の目前で、謎の人間消失は起きた。大鳥様の奇跡か?鳥女と呼ばれる化け物の仕業か?『厭魅の如き憑くもの』に続く“刀城言耶”シリーズ第二長編待望の刊行。
シリーズの他の作品に比べると謎や登場人物がシンプルにまとまっていて、いろいろ想像しやすくはあった。
トリックは、あからさまに意味ありげなあっちかなーと思ったらフェイクで、それは時間的になさそうだなーと思っていたほうが真だった。ありなのかよ!
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